防火戸ってどういうもの？

 


ショッピングセンター・大きな駅・ビルの中を歩いている時に、

階段ちかくの通路で防火戸ぼうかどの文字を

見たことがある方は多いと思います。

 

この「防火戸」は

火災が起きた時に、火炎の延焼や煙・ガスが

隣となりの区域くいきに広がるのを防止する　という役割を持っています。

 

 

 

 

 

↑左側には火と煙が入ってきません。

火災時に防火戸が閉鎖へいさしていれば、

防火戸が、一時的に火と煙をせきとめます。

せきとめている間に、

避難ひなん・消防署への通報つうほうができて、

火災の被害を小さくするというのが防火戸の役割です。

 

「防火シャッター」・「防火扉」ぼうかとびらも、正式名称は「防火戸」になります。

防火シャッターの仕組みについてのくわしい解説はこの別ページからどうぞ。
防火シャッターはどういう仕組みで動いてる？/相模原市の小学校にて、防火シャッターの補修（部品交換）作業

 

建物への被害ひがいを小さくし、避難ひなんする時間を作ってくれる、

とても重要な設備なのです。

 

ところが…

 

 

 

 

 

 

 

・扉が開いた状態で固定され、閉鎖へいさされていない

・故障こしょうで自動シャッターが下りてこない

・また、自動シャッターのおりてくる場所ににもつが置いてあって、シャッターが閉鎖へいさできない
…

こういった状態じょうたいだと、一気に火災の被害ひがいが広がってしまいます。

防火戸は、火災時に「閉じている」状態じょうたいでないと、その役目をはたせません。

 

防火戸を設置するとき・作る時のきまり

「一定の区画くかくごとに設置すること」

「対炎性たいえんせいのある素材で作られること」などが消防法しょうぼうほうで規定きていされています。

 

◆消防設備しょうぼうせつびの”防火区画ぼうかくかく”って？

大きな建物だと、他の場所でおきた火災に気づかないことがあります。煙がひろがる速度は特に速く、危険です。


建築基準法けんちくきじゅんほうでは、建物を一定の広さごとに切り分け、その間に火を防ぐ性能せいのうがある壁を設置せっちする、という決まりがあります。

建物のほかの場所で起きた火災による煙や火が他の区画に行くことをふせげるようにするためです。

このとき切り分けられた区画が防火区画ぼうかくかくです。
たとえば火災が起きた時、階段部分にある防火戸を閉鎖へいさした場合…
1階で発生した煙や炎や有害ゆうがいガスが、2階に上がってくるのを少し遅らせてくれます。

大きな施設しせつ・ビルの階段のちかくによく「防火戸」があるのは、炎や煙が階段から他の階へ一気に広がってしまうのを止めるためです。

 

◆対炎性たいえんせいのある素材って？

建物たてものごとに決められた基準きじゅんにあわせて、

火災が起きてから２０分、または１時間のあいだ、

炎をせき止めることが防火戸（防火扉）に必要な性能せいのうです。

以下のものが建設省けんせつしょうによって

防火戸の材料ざいりょう・構造こうぞうとしてみとめられています。


・鉄製てつせい

・鉄骨てっこつまたは鉄骨コンクリート製

・土壌どじょうづくり

・鉄とアミ入りガラス

・骨組みに防火塗料ぼうかとりょうを塗ぬった木材

・防火塗料を塗った木材

・アミ入りガラス

 

 

防火戸の種類

 

防火戸には二つの種類しゅるいがあります。

・「常時/じょうじ」と

・「随時/ずいじ」です。

 

まず、

『常時閉鎖式防火戸』（じょうじへいさがたぼうかど）。

 

「じょうじ・へいさ」とあるように、

常に閉まっている状態になっています。

特徴とくちょうは

 

・人が通過つうかする時だけ開ける

・大開きにしても、ひらいた状態でロックされない

・手を放すことで必ず自動的じどうてきにしまる

 

 

 

……といったものです。

 

もうひとつ

『随時閉鎖型防火戸（ずいじへいさがたぼうかど）』について。

 

 

 

「ずいじ」とは「必要なときにいつでも」

という意味です。

「いつもは開いていて、火災の時に「ずいじ」しまる」ため

この名前になっています。

 

・煙もしくは熱を感知かんちすると、自動で閉じる

 

・扉が動作して閉鎖へいさされるタイプのもの、

　シャッターが上方収納部じょうほうしゅうのうぶ(天井近くの、シャッターがおさめてあるところ)から下りてきて

　閉鎖されるタイプのものがある

 

・手動しゅどうで操作そうさすることもでき、

制御盤せいぎょばんで遠隔操作えんかくそうさが出来るものもある

 

「じょうじ」は、

通過つうかしたい時は普通のドアと同じように、開けたい時に開けることが出来ます。

この「ずいじ」は、普段は閉鎖へいさしていません。普通に通行できるようになっています。シャッターやドアは、天井付近てんじょうふきんや壁側かべがわなどに収納しゅうのうされています。

火災が起きた時に、火災報知器かさいほうちきと連動して、自動的じどうてきに閉鎖へいさし、

人が通れなくなります。

 

そのかわり、

「ずいじ」が、避難経路ひなんけいろ自体に設置せっちされている場合・または特に大きな防火戸の場合…
防火戸自体に

ひとまわり小さな「くぐり戸」が

取り付けてあることが多いです。

「くぐり戸」は、小さなドアで、防火戸の大きさがが3平方メートル以上の時に設置されます。

手であけることができ、開けたら自動的に締まるという機能きのうをもちます。

 

↓「ずいじ」の防火戸が自動的に閉まっているところです。

 

↓ドアの中にドアがありますね。

 

↓開けることができます。

これが「くぐり戸」です。

 

くぐり戸つきの防火戸のある場所が

避難経路ひなんけいろとされている施設なら、

避難訓練ひなんくんれんの時に、くぐり戸が利用できる事を

確認・周知しておくことが望ましいといえます。

 

いざという時、普段と違う通路を使うことを

前もって知っていることで、

避難がずっとスムーズになります。

 

このように、

防火戸の役割のメインは

「閉鎖して炎や煙を防ぐ」ことですが、

「必要に応じて通路や避難経路ひなんけいろになる」

という役目も兼ねていることがあります。

 

この両方の役割が

いつでも、問題なく機能する状態にあることが大事です。

防火戸の機能が上手く働くことができない管理状態のまま

放置されていると、非常に危険なのです。

 

重大な火災事故での防火戸の管理不備

 

国内でこれまでに起きた重大な火災事故かさいじこで判明はんめいしている

防火戸がらみの不備事例ふびじれいには

 

・常閉式じょうへいしきの防火戸が、施設利用者しせつりようしゃによって

　ロープなどによって解放状態かいほうじょうたいで固定されていた

 

 

・点検を怠り、

　現行の規定きていでは不適格ふてきかくな設備を放置していた
(以前の消防法の規定にはちゃんとそっていたものの、消防法が新しく改正されて「その設備の状態はダメです」と消防検査などで指示されていたのに、設置・交換・修理などの改善をしないで放置していたなど)

 

・シャッターの降りる場所に荷物が置かれていて

　シャッターが完全に地面に接地せっちできず、閉鎖ができなかった

 

……といったものがあります。

さらに

 

・避難経路ひなんけいろとなっている場所に荷物を積み上げていたことで

　避難経路ひなんけいろとして使えなかった

 

 

例もあります。

 

火災時、防火戸が有効に使える状態であるかどうかは、

被害の程度を大きく左右するのではないでしょうか。

防火設備は定期点検を必ず行い、不備ふびがあれば修繕しゅうぜんをして、

いざという時にきちんと機能きのうするように、

そして日頃から、防火戸の状態に気を配っていただくことが大事かと思います。

 

防火戸以外の防火設備についても、またご紹介させていただきますね。

 

 

 

当コラムの別記事/「常時閉鎖式防火戸と随時閉鎖式防火戸について」

防火戸前にスタッフが物品を置かないようにするには…/点検実績ブログ

消防検査・点検で「閉鎖障害」って言われたけどどうしたらいいの？/防火戸前の物品問題

 

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参考/wikipedia 防火戸  福岡市整形外科医院火災