★「防火戸のゴムストッパー」…

重い、防火扉

開いた後、手を触れなくても、自動で閉まる重い扉。
病室の扉や、マンションのこのタイプの扉は、防火扉の役割も兼ねています。

「日々使うのに、重くて勝手に閉じるのは、使いづらい」
「出入りがある場所だから、昼の間は開けておきたい」

こうした需要か、「ゴムストッパー」という、扉を固定して開いておく道具を使って、防火戸を開けた状態に固定しているケースが時折見受けられます。

扉の足元に挟んで止めるストッパー(イメージ)

また…

「防火戸前と書いてあるけど、今日だけ荷物を置いておきたい」
「万一起こるかもしれない火災より、日々の業務の方が大事」

日々の業務に追われてしまい、防火戸が開いたときに使われるスペースに、物品を置いてしまっているケースも多くあります。


ですが、ゴムストッパーに限らず、

「本来なら閉じている防火戸を開けておく」
・「防火戸が閉まる場所なのに荷物を置いておく」

これらは実は消防法違反です。

「違反している状態」に、なってしまうのです。

 避難口に荷物がある場合も同様です

また、「違反だから」という以前に、「危険だから」という視点で、防火戸の状態について気を配らなければならないと思わせる事例があります。

★小規模雑居ビルで多くの死者が

平成13年(2001年)の9月に起きた、歌舞伎町雑居ビル火災。
地上4階・地下2階の雑居ビルで、敷地面積は3・4LDKの住宅並み。
この小規模な雑居ビルで、44名という数の死者がでてしまいました。
死因のほとんどが一酸化炭素中毒と酸欠。

このビルでは、火災以前から解決されていないままだった消防不備が多く放置されていました。

火災後、建物のオーナーらは防災管理を怠ったとして有罪となり、消防管理にかかわる消防法が大きく改正されたのですが…この火災で特に問題となった点のうち2点に注目します。

★防火戸が閉鎖できていれば助かった?

1:防火戸が閉まらなかった・避難路に物があった
2:2方向避難できなかった

1:については、裁判にて「防火戸が閉鎖できていれば、44人は助かっていた」とされました。

3階で発生した火災の煙が、階段をつたって4階に侵入するまでの時間は
数分
だったとみられています。

煙は高所へ向かって3~4倍に急膨張する性質があります。

煙の垂直方向の上昇速度:1.5m~3.5m/秒。

2秒で7メートル…
4-5階のビルの階段の場合、数秒で最上階まで煙が上昇します。
この急激な煙の侵入を防げなかったことで被害が拡大したとされていますが、煙がどれほど危険なのか再確認してみます。

★火災の煙は何重にも危険

煙の成分は…

・不完全燃焼で生まれた一酸化炭素
・炭素微粒子(すす)
・酸素欠乏空気
・有毒ガス

こうした成分が混ざった危険な煙が、高温で広がります。

すすによる黒い煙は視界を悪くして避難を困難にし、
見た目の恐怖からも判断力を鈍らせます。
くわえて有毒ガスで目が充血し・高温の熱で気道を火傷するなど、体にも悪影響を起こさせる
一酸化炭素中毒・酸欠のおそれもあり、これらが重篤になると意識障害に。

実際、住宅火災の被害者の4割は、一酸化炭素中毒が原因という統計が出ています。

参考:消防庁/消防白書H30 附帯資料 1-1-18よりhttps://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h30/items/part7_section1.pdf

この煙がたてものに広がるのを一時的におさえ、避難・消火する時間をつくるのが、防火設備の役割です。

防火戸は、煙をおさえこんで時間を稼ぐことができ、甲種防火戸であれば1時間はもつ構造をしています。
防火戸が開けっ放しになっていると、火元から遠い場所にも煙が一気に広がってしまい、避難を難しくしてしまうのです。

★2方向避難のこと

マンション・アパートの多くは、玄関側には出られなくても、バルコニー側をつたうことで、避難器具で地上へ逃げられるように作られています。

これは「2方向避難」という考え方による設計です。(階段を2方向に設ける場合もあり、その場合経路は別とされます)

危険な方向への避難を避け、安全な避難経路を使って脱出することができます。

★階段がひとつしかなかった

煙は階段をあっという間に煙突状態にしてしまいます。

防火区画では、 階段部は「竪穴区画」と名付けられていて特別に警戒され、 各階の入り口と階段部の間に防火戸がもうけられますが…

この火災では、階段部と各階の間にある防火戸が機能しませんでした。それにくわえて…

建物に外階段はなく、避難経路は、短時間で煙が充満してしまった階段のみでした。

避難器具の設置義務がありましたが…

3階/未設置
4階/設置されていたものの、使うことができなかった

とのこと。 また、開口部(窓)がふさがれていたそうです。

参考:Wikipedia/歌舞伎町ビル火災 

この階段には多量の物品が置かれ、避難の障害になっていたことにくわえ、可燃物の種類が複合(発泡スチロール・段ボールなど)することで、煙の危険性が増大するという 実験結果がありました。

参考/消防研究センター  小規模雑居ビル火災をめぐる問題と防火安全対策

避難経路の確保と状態の保全・防火戸の管理など、防火管理上の問題は、火災の時に大きく人命にかかわってきます。

★日常からの管理がたいせつ

「便利さを優先して、ゴムストッパー」
「とりあえずここに荷物を置いておく」…

事例を通してみると、こうしたささいな動機からの防火戸を「正常に動かない」状態にしておくのは非常に危ないことだと感じます。

実際に起きた火災の悲惨な被害の教訓から、消防法の取り決めは厳しくされています。「決まりだから」ではなく、「危険だから」なのですね。

★防火戸の改修

防火戸は、

・常に閉まっている「常閉式」
・普段は開いていて、いざというときにだけ「感知器と連動して開く「随閉式」

この二つがあり、必要性にそぐわなくなった時には、もう一方へ改修することができる場合があります。「常閉式」→「随閉式」にするには、感知器や配線・ラッチなどが必要になるため、詳しくはご相談ください。

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